24th September '00
 at吉祥寺Star Pine's Cafe

「みなさん、お待たせしましたー!それじゃそろそろ行きたいと思いますっ!ニッポン、ちゃちゃちゃー!!!」赤いシャツに赤のネクタイ、黒のパンツの杉さん。カウントが始まる。私はなぜか慌てている。イントロが始まる。「何、何?」聴きなれないアレンジにさらに慌ててしまう。♪合言葉はひとつParty goes on〜♪うっ…「スターライトラプソディー」だぁ…こんな曲から始めちゃうんですかぁ…もう、この時点で動けなくなる。何度も何度も杉さんのライブを見ているのに今日ここにいる杉さんは何か違う気がする。あの頃の杉さんがここにいる。そう思うだけで鳥肌が立ってきて、体中が震えているのが自分でも分かる。どこからこんな感情が湧いてくるのか分からないけど頭の中がパニックになってぼろぼろ涙がこぼれてくる。何でなんだろう。嶋田さんの小気味いいほどのピアノの音がジャズっぽくてここがどこかすら忘れてしまいそう。♪星が生まれてからLong Long Time♪長いときを経てあの頃の切ない気持ちまで自分の中によみがえってくる。続いて「ヴィーナス」優しくて大きな歌が自分のまわりの空気を包んでくれる。最近の曲だと思っていてももう8年も前の曲なんだ…。何だか自分の中の時間の感覚がおかしくなっているよう。

「どうもありがとう!日本もマラソンで金メダル取ったことだし、今日は朝早く起きて見ちゃった(笑)席がなくて大変だとは思うけど立って踊りだしたくなるようなライブにしますので最後までゆっくり楽しんでいってくださいっ!!」う…この曲は…なんだかくらくらして横のスピーカーに体を預けてしまう。少し収まっていた感情がまた大きな波のようにうねりを上げてくる。「Catch Your Way」だ…。TVから流れてきた杉さんの声。あの頃の夕焼けの画像がどうしてこんなにも鮮明に浮かんでくるんだろう。ピアノが切れ目なく流れ杉さんのボーカルへと。♪昨夜一人のBackstageで夢を見てたんだ…♪「Backstage Dreamer」だ…。この頃の曲って本当に思い入れが多すぎて普通じゃいられない。ドラムの音が重なる。私の位置からドラムの島村さんは見えないけれどその音が真横のスピーカーから心臓に直接響いてくる。大きな帽子の陰が壁に映っている。ほんの少し位置をずれてステージを覗き込むとBassの藤田さんが大きな帽子をかぶって本当に楽しそうにBassを弾いていた。大きく手を上げて前に出てきたり、こんなBass見るの初めて。ギターの圭右さんも泳ぐようになめらか。ああ、なんだかこんなにも素敵な音に囲まれて幸せな気持ちでいっぱいになる。会場のStar Pine's Cafeは見上げると2階がバルコニー席のようで外国の円筒形の劇場のよう。この曲にあまりにも似合いすぎて嬉しくなる。

「久しぶりの曲をやると口が回らなくて口の中切っちゃって口内炎状態なんですけど(笑)」本当に久しぶりの曲ばかりでこちらが恐縮してしまいそう。「えっと…ってここでしゃべるから長くなっちゃうんだよね…いこっ!!」杉さんも何だかいつものMCとは違う気がする。「久々にやります」と言って「Love Her」を。はぁー。。。。だめだぁ。また体が震えてくる。杉さんの切ない声が響いてくる。あの頃の雨の匂い。どうしてそんなものが思い出されるんだろう。ドラムのカウントからBassの音が重なる。「Melting World」へ。Bassとドラムの音がずんずん響いてくる。会場全体が揺れている。「Have a hot day!!」大きな声で叫びながら2階のほうを指さす杉さん。あの頃の髪の長い杉さんと重なって見える。

「さっき開演前にブライアンセッツァーをかけてたんですけどこの前、このアルバムをブライアンセッツァーの気持ちになって聴いてたらすごく気持ちがよくてね、こんなふうにギターを弾けたら気持ちがいいだろうなって思って…。手がちっちゃいからギター、挫折したこと思い出しちゃってね。だけど手がちっちゃかったから僕はこうやってギタリストにならずに歌を作ったり、歌ったりしてるんだけど…欠点も考えようによっちゃいいってことだよね。で、今回、曲を選ぶにあたっていろいろ曲を聴いてたんだけど僕の歌って欠点を指摘する歌が多いなーと思って(笑)内気だとか、目が悪いだとか、臆病だとか、しょっちゅう笑ってるだとか…余計なお世話って感じですけど…(笑)。で、次にやる曲もそうなんだけど…メガネをかけてる人はメガネを外して聴いてください。」「恋する0.1」を。私の位置から見える女性の方がメガネを外している。細めた彼女の杉さんを見つめる目がとても素敵。「いろんなユニットでやってるんですけどホントにいいミュージシャンに囲まれてて、これも僕の人徳だと思って…ませんけど…(笑)名づけて杉真理カルテット(笑)」と言ってメンバー紹介。みんな本当に長い付き合いのメンバーで心から信頼している感じがとても伝わってくる。アコースティックギターとキーボードのイントロから「恋するQuest」へ。なんだかジャズっぽくて大人の雰囲気。ピアノのスローな雰囲気が素敵。そして「Heaven in my heart」へ。肯定されることの安堵感。不安な気持ちと戦ってるからこういう言葉をどこかでみんな求めているのかもしれない。「ほとんどの曲ライブでやったんだけど今日はやったことない曲をやります『わが心のエイミー』会場から大きな拍手。ああ、こんな曲まで…。ピアノと杉さんの声が静まり返った会場に響く。ピアノの余韻も終わらないうちに「Smily Smile」へ。ダメな自分を杉さんの歌は励ましつづけてくれる。何のとりえもなくて生きてる意味がわかんなくてどうしていいかわからなくて…だけどどこかに私の必要性がある気がしてくる。そんなふうに思わせてくれる杉さんの曲たち。

「レコーディングも徐々に始まっていて…」会場から大きな拍手。「コーラスとか昔は自分一人でやってたんだけど、最近はコーラスサボってて(笑)昔、高校生の頃、ポールマッカートニーとかの多重録音のアルバムを聴いて『俺にこの多重録音の設備があれば作れるのにな』って思ってて…ってそのころは作れなかったと思うんですけど(笑)今、機材があって…そんなのを多重録音でデモテープっぽいのを作ってみようかな…って思って…フルアルバムはまた考えてるんですけど、それはそれで…レコードってさ、A面、B面ってあって…松尾清憲くんの説によると人間が集中して聞けるのは5〜6曲だってことで、松尾君の5曲入りのアルバムとか聴いてたらきゅっと詰まってる気がして…だからもしかしたらA面、B面ってわけて出すかもしれません(笑)」なんだか少年の頃の夢が今、こうして杉さんの中で形になろうとしている。「久しぶりにやるバラードなんですけど…」と言って「Second Chance」を。また鳥肌が立ってくる。♪ただひたすらに車飛ばせば終わりかけた何かに間に合う気がした…♪今の自分とオーバーラップして胸が苦しくなる。♪誰にもSecond Chance残されているなら…♪ 「Welcome to my world」へ。圭右さんや藤田さんのコーラスが重なってゆく。圭右さんのギターと杉さんのギターが絡んでクギ付けになってしまう。杉さんと圭右さんのツインギターが聴けるなんて夢みたい。「あ〜ギター緊張したっ」と照れたように笑う杉さん。でもホントに素敵でしたぁ。

「パーカッションはいつも同じ人にやってもらってるんだけど(笑)さっき楽屋で見かけたんで呼んでみましょう」と言って里ちゃんの登場。今晩吉祥寺の別のライブハウスであると言うライブのチラシを紙飛行機にして飛ばしながら登場。コンガをセット。やっと何か私の緊張もほぐれてきた。「太陽が知っている」やっぱりこの曲を聴くとにこにこしてしまう。ピアノが入ったこの曲もまた違った感じで素敵。どんな時でもあったかいパワーをくれる。「では続けてバンバンいきましょう!!」と赤ちゃんの鳴き声とともに「プレデアス星への招待状」。会場はまた大きく揺れている。ピアノのイントロから「K氏のロックンロール」へ。どんどんヒートアップしてくる。間髪いれずに「スクールベルを鳴らせ!」へ。大きな歓声が上がる。やっとリズムが取れ始めた私の体がまた感電したみたいに動けなくなる。この曲が目の前にある。そう思うだけで鳥肌が立ってくる。ステージを見つめるみんなの瞳、本当にみんなStargazerだ。きらきらした目でみんな杉さんを見てる。いろんな思い出が詰まった杉さんの曲たちがそれぞれの人の中で思い出とオーバーラップしていく。少年の頃、少女の頃と、大人になった今とをつなぐ杉さんの歌たち。切り刻んでいた音楽雑誌、レコードスプレーの匂い、挫折した押入れの中のギター、記憶の隅に隠れていた切ない思い。いろんな思いが頭の中を混乱させている。何だかとても変な気持ち。杉さんたちが手を振りながらステージを去る。拍手からアンコールの手拍子へと変わっていく。まだ終わって欲しくない…。

「どうもありがとうっ!」杉さんが再びステージへ現れる。12月の薫ちゃんとのライブの告知をしながら「12月にもこのバンドでまたやりたいなーっ。だめ?いいよね?」会場からは大きな大きな拍手。また、ソロの杉さんに会える。なんだか信じられない気持ちでいっぱいになる。あんなにも夢みてたライブが目の前にあって、そしてまたある。「じゃ、行きましょう!」と言ってカウントを取る。「Don't stop the music」へ。また鳥肌。アンコールでこの曲をやってくれるんだ。なんだか杉さんの音楽への思いが伝わってくるよう。このままずっと、このままだといいのに。そして間髪いれずに「Symphony#10」へ。楽しそうな杉さんを見ているとこっちまで幸せになる。そうなんだ、自分で音楽を選ぶようになってからずっと杉さんの音楽は私のそばにあったんだ。そう思うとここに今、自分がいられることを本当に感謝したい気持ちでいっぱいになってくる。気持ちがいっぱいでもうリズムを取る事すら出来ない。「どうもありがとーっ!!」そうして杉さんはステージを下りる。拍手はやまない。そしてアンコールの声へ。

「本当にどうもありがとう!!」ステージに現れる杉さん。改めてメンバー紹介。「こうやって僕が作ってくれた曲たちをみなさんが可愛がってくれてるってすごくうれしくて、時には保護者のように見守ってくれてたり、時には恋人のように…アイフルじゃないですよ(笑)…時には友だちのように、本当に僕の音楽を可愛がってくれる皆さんがいるから僕は頑張れるんだと思います。本当にどうもありがとう。最後にこの曲を歌わせてください」「It's time」を。♪It's timeもう行かなくちゃ…♪こんな曲歌われちゃったらもう何もいえなくなってしまう。時々かすれる杉さんの声がさらに切なくさせる。とうとうこの時が来てしまったんだ…。

BGMにはBeatlesの「Good Night」が。もう本当に終わりなんだ…と思っていると杉さんが一人で登場。「立ちっぱなしで疲れちゃったでしょう、ホントごめんね。お詫びに…一緒に歌ってください…」と言って「Dreamin'」を。かすれた、だけど優しい杉さんの声。♪戻るところが見えない時 ディズニーランドもう一度信じよう…♪杉さんはいろんな形で活動しているけど原点はここなんだと、そしてここにやっとたどり着けた自分が嬉しかった。大きな拍手が止まらない。会場が明るくなってみんなの笑顔が見える。だけど私はただ呆然と立ち尽くすだけしか出来ない。いろんな感情が自分の中にあってそれがうまくコントロールできない。昔の自分、今の自分、昔の杉さん、今の杉さん。たくさんの思い出たち。それが波のように自分の中に押し寄せてくる。それぞれの思い出の中にある杉さんの曲たち。忘れかけてたページをその曲たちがめくってくれた。懐かしい匂いや感情までもいっしょに。ひとりひとりの笑顔や泣き顔から満たされた気持ちが伝わってくる。みんなそうなんだね。

杉さんを通じて出会った人達がいたから私はあの場所にいれたんだと思う。心から感謝。いろんな事があっていろんな相談をしたり、そんな時に慰めてくれたり、杉さんの歌をプレゼントしてくれたり、一緒に笑ったり、泣いたり、そんな事が私にとって心の支えになっています。これからもずっと私の思い出の中に生き続ける杉さんの曲たち、そしてこれからの杉さんの曲もきっと私の人生のBGMとして一緒に歩いて行くんだろうな…そんなふうに感じたあの日のライブでした。

PS.藤田さんがかぶってた大きな帽子、ミッキーマウスの帽子だったね♪

Thanks to Masamichi Sugi & Quartet
Dreamland & Mr.P & My soulmates

Written by nia