8th July 2001 at STB139六本木石日記
暗くなった会場が少しづつざわめく。ステージの奥から次々と現れる人影。杉さんと薫ちゃん、そしてChili Dogsのメンバーがポディションにつく。ほんの少し背伸びをしたくなるようなSTBの雰囲気とこれから始まるであろう素敵な時間への期待で少しづつ緊張してくる。
♪瞳の向こうによみがえるの 月影のSchool Gate 渚の恋…♪凛とした空気があたりに漂う。会場に広がる薫ちゃんのアカペラに少しづつ音が重なって行く。♪…そっと囁くのよ…Hello Again…♪大きな拍手と共に「8月生まれ」のイントロへと。一番夏らしくて一番薫ちゃんらしい曲の一つかもしれない。今日の薫ちゃんは本当にPOP。赤と白のTシャツに白のパンツ。杉さんは懐かしいピンクのギターに合わせてかピンクの花柄のシャツに白のパンツ、おまけにスニーカーもピンク。EVERGREENな音楽とEVERGREENな2人。ドラムのカウントから「Davy's Devil」へ。懐かしくて、甘酸っぱくてそしてCuteで…。サビで重なって来る薫ちゃんのコーラスもさらにCute。
「こんばんは、杉真理です。今日はピンク男でやってきました!(笑)」「杉さんに負けずに派手にしようと思ったんですけど、なんか日体大の体操の選手みたいになっちゃったぁ〜。今夜はきっと彦星たちも幸せで、私たちもこうやってみなさんたちにお会いできて、素敵な夏の始まりになりました。今日はゆっくり楽しんで行ってくださいっ!」そして「That's my job」へ。薫ちゃんの合いの手も楽しい。♪この世には二種類の人がいるのさ 悔やんで生きる人と楽しむ人〜♪杉さんそのもの〜♪なんて(笑)いたるさんのギターソロもかっこいいっ。そしてメドレーのように「さよならはエスカレーターで」へ。大好きだったこの曲をLiveで聴くのは初めてかもしれない。自分の中で憧れていた女性像がこの歌の中にあったけど、きっといつになっても追いつかない永遠の憧れ。
「僕の部屋のクーラーが壊れてこの前買ったんですけど、僕の部屋ってホントに足の踏み場がないんです。で、掃除して、工事してもらったんですけど、工事の人に『ミュージシャンの人と同じ名前ですよね?』って言われちゃって、そういうのって慣れてないもんで、でも、まぁ『そうです』って言ったら『ナイアガラトライアングル持ってます』とか言われちゃって(笑)持ってるんだったら早く気付けよって(笑)」「私は昔、クラス会があった時にあんまり仲良かった人じゃない人に『歌手で須藤薫っていてね、最初あなたかと思っちゃった』って言われたんで『そうだよ』って言ったら走って逃げて行っちゃったんです。これはどう理解すればいいんでしょうか?(笑)」薫ちゃんとの掛合いもばっちり。「と言うわけで次は久々にやる曲です。」と「恋のかけひき」を。切なくて、そしてはかないこの曲が似合う季節がもうすぐ来る。続いて「Rainy Day Hello」へ。杉さんの声が重なり、まるで映画を見ているみたいに状景が浮かんで来る。
「去年、一昨年とレコーディングやライブで忙しくて余裕が無かったんですけど、2年ぶりくらいに家族と旅行に行きました。杉さんはずっと音楽を作りつづけてらっしゃって…いろんな人のプロデュースとかで芸能雑誌とかに名前が出てたりしましたよねー。TVとかで杉さんの名前が出てるやーって楽しませてもらったんですけど(笑)。で、ソロアルバムも出されて、その中で私もコーラスで参加させていただいてます『I need her love』聴いて下さい。」スムーズな薫ちゃんのMC。この前までMCが繋がらなくて杉さんに助けを求めてたような気がするのに。この曲もピアノやギターのアレンジも少しづつ変わってきて、清水さんと谷口さんと薫ちゃんのコーラスでさらに荘厳に感じられる。
「夏になると聴きたくなるような曲とかありますけど、暑苦しいアーティストの人とかもいますもんねぇ」「誰のこと?」「誰って訳じゃないけど…」もぉ、薫ちゃんったら(笑)「大瀧詠一さんも夏になると聴きたくなるアーティストの一人ですけど、その大瀧さんが作ってくださった『あなただけI love you』聴いて下さい。」もう20年たっても30年たってもこの曲をCuteに歌えるのは薫ちゃんしかいないんだろうなぁ。杉さんは12弦ギターに持ち替えている。大滝さんのウォールオブサウンドのこの曲がさらに厚く響く。続いて「恋のフォトグラフ」。ホントに、ホントにロマンティックでCuteな曲が続く。懐かしいけど古くない。海辺にラジカセを持って行って浜辺でただみんなとバカな話をしたり、恋の相談をしたりして過ごした夏の日がフラッシュバックのようによみがえる。
恒例になったアコースティックコーナーへ。椅子が用意されて、それぞれステージの前に出てメンバー紹介。「ベース、谷口守っ!」「おばんです。」谷口さんは帽子にサングラス手には拍子木。「ドラムスとパーカッション、そして派手なシャツ(笑)清水淳っ!」派手なアロハに金髪の清水さん。「今日はアコーディオンも弾いちゃうという嶋田陽一っ!」黒いアコーディオンがキラキラ輝いている。「そしてギター渡辺格っ!」大きな大きな拍手。「今日は1967年にアメリカでNo.1になった曲で、フランク・シナトラと娘さんのナンシー・シナトラの『恋のひとこと(Something Stupid)』という曲をやってみたいと思います。昔から聴いてたんだけど最近CDを手に入れて歌詞を読んだらいい詞なのよぉ〜。当時の向こうの歌詞って『お前が欲しい〜』とか『お前が好きだ〜』みたいなのが多いじゃないですか、でもおしゃれなんで説明しちゃおうかなっ(笑)『君と一緒に過ごせる晩を待っているんだ。もし踊りに行けたら君を虜にするチャンスだってあるさ。踊った後、少し静かな場所で飲んで、でもそんな時僕はつまらない事を言って台無しにしてしまう、I love you…とか言って…』…なんかロマンティックだよね。」「あー、そんな気持ちになったこともあったんだぁ…」(笑)「今日はゴンドラに乗ってる雰囲気でお送りしたいと思います。」ノスタルジックでロマンティック。改めて歌詞を知るとまた深みも増す気がする。
「リハーサルする時にみんなでいろいろアイディアを出し合うんですけど、今日は土着系のアレンジで1回しかやったこと無いんだけど…。今日はやちゃうよっ!」といたずら気味に笑う杉さん。もぉー(笑)そう言って「恋するモナリザ」を。清水さんのパーカッションが心地良く響く。薫ちゃんのコーラスも素敵…なのに途中であれ…?(笑)「ごめーん!歌詞忘れちゃったぁ〜もう1回やっていい?(笑)手拍子なんてやってくれたら嬉しいなーっ」そう言って仕切り直し(笑)手拍子を始めるけどなんだか聴き入ってしまって手拍子が出来なくなってしまう。
「実は本番が始まるまでTVを見てたんですけど『ちびまるこちゃん』やってて、今日はピアノの発表会の話で会場にお父さんを見付けた瞬間『ああぁーっ音を思い出さないぃー』そういうパニックになるっていうんだったんですけど、なったらどうしよぉって思ったらなってしまいました。(笑)」「はい。(笑)…最近でもないんですけど、携帯を替えたんです。いろんな機能がついててわかんなくて、いつのまにかどのボタンを押したのかわかんないんですけど、リーンってなったら『着信拒否』っていうのになっちゃって私、拒否した覚えないのにぃー。あれはなんなんでしょうねぇ。なんかやりづらい世の中になっちゃったなぁー。で、この前も子供の学校から保険証のコピーを持って来てくださいって言われたんでFAXのハンドコピーで取ったんですけど、どうやってもA4サイズの保険証しかできなくて・・・。子供には恥をかかせまいと思ってるのに…。ふざけた親だって思われてるんだろうなぁ…。」うーん、携帯を替えてまだ使いこなせてない私にも身に詰まるお話です。(笑)「次はチェットアトキンスっていうギターの名手がいるんですけど、薫ちゃんの曲をチェットアトキンス風にやってみようって言ってて、家に帰ったらニュースでチェットアトキンス死亡って出てて・・・。前にも『中田喜直さんっていいよー』って言ってたら家に帰ったら亡くなってて…。誰か殺したい人がいたら僕に言って下さい。」…す、杉さぁーんっ!「いたるくん、チェットアトキンスとナッシュビルでレコーディングしたんだよね、今日はいたるくんのチェット奏法・・・ちょっとだけでんす、って感じですけど(笑)」・・・杉さーん!(笑)暖かなギターの音が薫ちゃんの柔らかい声と重なって行く。清水さんはパーカッションから箱のようなものを、嶋田さんはトランクを叩いて。小粋で、大人の新しい「I'm sorry」。
「この前、ポールマッカートニーのベストが出たんですけど、ビートルズのファンクラブ用になんか書かなくちゃいけなくて。で、向こうであったビデオを見たんだけど、ポールの娘さんがインタビューしてる奴で、字幕が無かったんで何回も見たんだけど、すごい努力家で、尊敬しちゃって。ますます好きになっちゃったんですけど。で、ポールはやっぱりコーラスの師匠だなって思って、コーラスをメインにして作った曲です、『お聞きローズマリー』」すさんだとげとげした気持ちを暖めて静めてくれる。柔らかい布に包まれているように安心していくこの曲。ああ、やっぱり私にはこんな音楽が必要なんだなぁと改めて確認させられてしまった。
「私も杉さんも親になりまして、こうやってコンサートに足を運んでくださってる方も一緒に歴史を築いてくださってるから、子供さんのいる方もいらっしゃると思います。だけど私は余裕がなくて、歌詞が覚えれなかったりしてナーバス期間があったりするんです。そんな時、つい子供に当っちゃったりする時があるんですよね。で、後から怒っちゃいけないとこで怒っちゃったなーって反省するんですけど、寝顔とか見てるとやっぱり、天使なんだなーとか思って、私が守ってあげるからねーって思ってしまうんですけど、そんな気持ちをこめて歌います。『I wish』」神々しくて、マリア様みたいな薫ちゃん。歌手である前に主婦であり、母親であり、そして一人の女性である薫ちゃんだから歌えるこの歌。私もこの歌が理解できる時が来るのかなぁ。流れるように次の曲のイントロへ。んー、何だっけ…ずっとずっと思い出そうと必死になってやっとサビになって思い出す。「REMEMBER」。杉さんのコーラスもとってもCute。
「Chili Dogsメンバー紹介行きまーす!」と「クラブロビーナ」のイントロに合わせてメンバー紹介。あたりはどんどん席を立ち始める。本当に楽しそうに歌う薫ちゃん。続いて「WAVE」へ。前回の時みんなでやった振り付け、もうやらないのかなぁなんて遠慮がちにやってみるとそれに気付いた薫ちゃんも合わせてくれる。いたるさんのギターソロから「君の物語」へ。すっかり定番になっている曲たちが続く。「ロマンティク天国」へ。♪もっともっと世界が恋するときのようにロマンティックになればいいのに…♪本当に本当にロマンティックな夜に大きな拍手が送られる。
拍手はアンコールの手拍子へと。しばらくしてメンバーがステージに現れる。大きな拍手。薫ちゃんは赤いアロハに着替えている。もうホントに夏がここに来ている。「ここでゲスト男を紹介したいと思います。パーカッション、里村美和!」会場からは大きな声援。里ちゃんはタンバリンを手に。「それじゃ、やっちゃうよっ!」イタズラそうな杉さん。ドラムスのカウントから…え、このイントロはもしかして…。もう、あたりを見まわすとみんなびっくりしたような顔。大好きなHi-Fi SETの「素直になりたい」。すり切れるほど聴いたアルバム。時計のCMだったからこの会社の時計、入学祝に死んだおばあちゃんに買ってもらったなぁなんて事まで思い出してしまう(笑)♪Love you forever そうあなただけをLove you 素直になりたい♪薫ちゃんと歌うことでまたHi-Fi SETとは違う「素直になりたい」が出来あがる。続いて「This magic moment」へ。曲が終わっても拍手は止み終わらない。
拍手につられて杉さんたちが再登場。「本当にどうもありがとうございます。12月15日にここでまたやることに決定しました!」大きな大きな拍手。「今度はそれまでに新曲なんかも作っちゃおうかなっなんて考えてるのでまた来てちょ。」「大人になったら夏休みなんてないからいつから夏ってわかんなくなっちゃってましたが、こうやってみなさんに会えて夏突入って感じです。本当にどうもありがとうございました。」そして「最後のデート」へ。しっとりと落ち付いた薫ちゃんのボーカルがライブを重ねるたびに艶を増す。どんどんしなやかにそして大胆に変わって行く薫ちゃん。素敵な音楽の魔法が薫ちゃんの周りのオーラをどんどん強くしているような気がする。「どうもありがとうー!」
アンコールの手拍子はやまない。大きな笑顔で杉さんが登場。薫ちゃんも本当に嬉しそう。「おまけ、やりまーす!これからホントに夏真っ盛りになると思います。みんなが楽しい夏がすごせるように『夏休みの宿題』をやりまーす!」あのころの夏はもうやってこないけれど、いくつになっても切なくて楽しい夏はやってくる。ふと忘れていたそんなことを思い出させてくれた。「どうもありがとうー!」「素晴らしい夏をー!」21世紀最初の夏の扉はもうすでに開かれていた。
Thanks to Kaoru Sudo & Masamichi Sugi
&My Soulmates with hugs & kisses
Written by nia