9th May 2002 at 松山全日空ホテル 星の教会

 会場である星の教会はホテルの屋上にある小さなチャペル。会場に入るとまぶしいばかりの神聖な場所だった。白いキルティングのバージンロード、客席となる参列席の横には花とリボンが飾っていて芳しい匂いが漂っている。正面には白い大きな十字架、その横には重厚なパイプオルガン、そして十字架の前にいすが二つ置かれ、ギターとキーボードがセッティングされていた。普段のライブやイベントとは違う少しあらたまったような雰囲気にいつにもまして緊張の度合いが高まる。

 鐘の音に続いてアカペラの「Here there and everywhere」が荘厳に響く。会場は水を打ったように静まる。司会者である正岡さんの登場。今日は正岡さんもタキシードに白いバラのブートニアをつけて素敵な装い。「みなさま、今夜はようこそ、星の教会へ。今夜は素敵な愛の始まり、ときめきを体感しましょう。人を愛する気持ちは普遍的です。そして、永遠で、偉大でもあります。この世に男と女がいる限り、たまにそうでない場合もありますが(笑)とにかく愛は永遠です。さぁ、われらが愛の救世主をお呼びしましょう。杉真理さんですー」「If I fell」のメロディとともに杉さんが登場。後ろから登場してきてるんだろうけど、なぜか、後ろを振り向けない。ようやく前のステージに現れてはじめて顔を上げる。バラの模様のシャツに真っ赤なスーツの杉さん。見回すと会場にいる人もおしゃれで雰囲気はまるで本当の結婚式みたいだ。「こんばんはー」「ごぶさたしてますー」「すごいですねー借りてきた牧師さんみたい(笑)」・・・す、杉さーんっ。「今夜はタイトルすごいですよ。『杉真理〜Love Storyはこれから〜in 星の教会』」「しびれますねー」くくく、ホントしびれますっ。「今日は『愛の始まり、恋のときめき』というたくさんメッセージをいただいているのでご紹介しますね。」と次々とメッセージを紹介。「今の彼とはスノーボードで知り合ったのですが、第一印象は最悪だったのですが、一緒にスノーボードをやっているうちに意外な一面を見て愛が始まりました」「意外な一面ってどんなんでしょうね。」「普段は見ない姿を見るって言うのはちょっとした恋心をくすぐるんじゃないでしょうかね。」「スキーとかで結ばれる人多いですよね。僕の友達なんですが、あるシンガーのバックやってて、スキー場でライブがあったときに、そのシンガーのファンクラブで来てた女の子と結婚した人がいるんですよ。そういうときはスキーうまくなきゃだめですよね(笑)」「いや、ころころ転がってて、『もうーしょうがないんだからー』ってところから恋が芽生えるとか・・・」「芽生えますかねぇ(爆)」・・・あらま、またいつもの爆笑トークになってきた(笑)。「こちらは香川県のKさんから。『恋愛はある種の誤解』・・・卒論みたいですねー」「言えてるかもしれませんね。」「そしてそれはある種の勘違いから始まる・・・すごいですねー。出会う宿命にあった2人の男女。宿命はケーキで言えばスポンジの部分である。・・・中に隠れて見えませんからね。・・・そして2人の運命がスタートする。運命はスポンジを飾るデコレーションの部分であり、素敵なケーキを作り上げていく。結婚する人たちを心から祝福する気持ちがあれば幸運ももたらされる。結婚式というものは招待された人々にも幸せを呼び込むチャンスであると思います。・・・す、すばらしいー」思わず会場から拍手。「宿命も運命も最終的には食べちゃうんですね。」す、杉さーんっ(^^;;。「このメッセージすばらしいですね。このメッセージ、秋のブライダルのパンフレットに使われるかもしれませんね(笑)。」「うーん、すばらしいっ。」その後も結婚記念日のたびにバラの花を一本づつ増やしてプレゼントしてもらっているご夫婦や、失恋も次へのステップだと前向きな人。「愛の始まりは後々考えるとただの思い込みと錯覚かもしれない。A面で恋をして、B面でつまづいた女が言うんだから確かです。あの頃はナイアガラの曲を聴きすぎて恋に恋してました」なんていうご意見も(笑)。「恋の始まりは一目ぼれ。その人に出会って、どきどきしたり、そのことを考えてわくわくしたりします。だけどこの年になると、それは愛し、愛されると言う範囲で相手のいやな部分まで受け入れて自分を見失わないようにしていきたいです。」というご意見も。「だけどそういうときのパワーってすごいですよね。普通ではできないこともできちゃったりするじゃないですか。今度のアルバムの中に『恋に落ちたらな』という曲があるんですけどその中で、今の君は全ての始まり、って歌詞なんですけど。誰かが恋してなきゃ、ここにいる人誰もいないわけじゃないですか。恋してるときのパワーがないと、人類から、昆虫から何もかもがないわけじゃないですか。」思わず深く納得。そしてまたメッセージ。「目が合って、視線が合うようになり、気が付いたら相手の姿を探している自分に気づいたときが恋の始まり。」なんだか切ないなぁ。そしていよいよ杉さんのライブへと。

 嶋田さんが登場し、キーボードの前に付く。嶋田さんと二人のライブだなんて初めてでどんな風になるのか想像も付かない。どきどきがどんどん高まってくる。大きな拍手の後、改めて杉さんの紹介。「それじゃまず、20周年と言うことで再発された『ナイアガラトライアングルVol.2』から『夢みる渚』を・・・」ふー。聞きなれた曲なのに会場の音の響き具合か少し違って聞こえる。嶋田さんのピアノの音も軽やかにシンクロしている。

 「どうもありがとうございます。こういう教会でやるのは、1回大学の学祭のチャペルでやったことがあるんですが、神聖な気持ちになりますね。今日は縁起の悪い曲は一切やりませんから(笑)次は最近まで洗剤のCMに使われてた『ぼくのOKUSAN』・・・ぴったりでしょ(笑)」と。これまた嶋田さんの流れるようなピアノがほんの少しジャズっぽくてかっこいい。柔らかな雰囲気が教会いっぱいに広がっていく。

 「この前友達の超能力者の清田君の結婚式に言ったんですが、最初の乾杯の音頭が電撃ネットワークの南部さんで、『今日は何も持ってきてないので』って缶ビールを頭につけて新郎新婦にお酌して(笑)。そして引き出物がよかったんです。一人一人、曲がったスプーンで(笑)。結婚の次は出産と言うことで、次は僕の友達のHABUくんっていう人がいるんですが、彼の娘が生まれた時に作った歌です『君がいるから』

 「最近便利なのは引き出物でカタログで申し込むって言うのがあるでしょ。僕のときもあれだったんだけど、後になって誰が何頼んだか分かるんですよね。ユーミンのところは台所セットで松尾清憲さんは包丁セットで、一人暮らしなのにまめだなーって(笑)。じゃ、次は『I need her love』を。」

「キーボード嶋田陽一くんです、彼はスキーが得意です。須藤薫さんのバックをやってました。そんなわけで結婚しました(笑)」ふふふ。「4月にエイプリルフールってありますよね。友達にエイプリルフールマニアがいるんですけど、彼女は自分の両親をだましたり、友達のアーティストをだましたりしてて、今年は僕のところに来るんじゃないかって注意してたんだけど、スタジオでお弁当食べてたらいきなり『FM新潟のなんとかですー』とかって生放送ですってTELがかかってきて、『好きなタイプはどんな女性ですかー』とか『うーん、色っぽい人かなー』とかってあわててその部屋を出て誰にも話したことのないニューアルバムのコンセプトから政治問題からとくとくとしゃべって最後に番組のタイトル言ってください、とかって『Pops Go On A Trip』とかって連呼したりして・・・。マネージャーに聞いてないよーって文句言ったりして。マネージャーもぐるだったんだけど(笑)その後、友達から電話があって『ラジオ聴いたよー』って。新潟なのになんでだろ?って思ったら後ろからそのエイプリルフールマニアの友達が『Pops Go On A Trip!』って。や、やられたーっ。。。」って。(笑)「で、僕はバリ島がすごく好きなんですけど、バリの夕暮れの浜辺で作った歌がありまして、今度のアルバムに入るんだけど『世界の中心』をやります。」モンキーフォレストバンドではすっかり馴染み深い曲だけどこうして聴くとまた格別。嶋田さんのピアノと杉さんの声が高い天井に響いて時間がゆっくりと流れていっている気がする。ピアノの音がいつにも増して切なく聞こえる。「世界の中心に君がいるからこうしてずっと僕は輝けるのさ、ほらそこが世界の中心・・・」

 「よし、立っちゃおうかなっ!ネスレのキットカットのCMでずっと流れてた曲なんだけどずっと今までキットカット、キットカットって呼んでて、タイトルつけなきゃと思って、つけました!『雨の日はきっと』(・・・カット)」(笑)・・・やっぱりそうだったのか(笑)聞きなれた曲のせいか会場からは手拍子が。さっきとは目線の高さが違うので杉さんのにこにこがいっぱいふりそそぐ。そしてこちらまでにこにこ。こわばっていた顔もようやく解けてきた感じ。初めて聴くフルコーラスのこの曲。英語の歌詞だけどその暖かさは十分に伝わってくる。雨の日に何気なく出されたかさのように、さりげない暖かさ。

 「じゃ、引き続き、皆さんの手拍子をいただけたら嬉しいな『WAVE』ですーっ」会場の手拍子はさっきよりもずっと大きくなっている。会場の中には初めて杉さんの曲を聴く人もいたようだったけどもうすっかり大きな波が起きている。

 「どうもありがとー!じゃ、最後に友達の結婚式に行って、牧師さんのスピーチからインスパイアされて作った曲です。聴いてください、『君は天使じゃない』ピアノの音から杉さんの凛とした声。もう20年近くも聴き続けて来た曲なのに、この場所で、このために待っていたかのようさえ聴こえる。この曲をこの場所で聞けるなんて、20年前には想像もしなかった。夢みたい。流れるような嶋田さんのピアノ。教会の中は壁も、床も、十字架も真っ白で、けがれたものが何一つない。清らかで、気高く、背筋が伸びるような思い。「I say, I love you forever 君は天使じゃないさ・・・」「どうもありがとう」・・・会場からは鳴り止まない拍手。

 「どうもありがとうございました。今日はレコーディングにも参加されてた嶋田さんもご一緒で、こういう機会はめったにないだろうから・・・もしよかったらもう1曲・・・」くぅー正岡さんっ大感謝!「へへへ、じゃぁ、おまけっ!今日は本当にありがとうございました。今日は暖かいみなさんと、神の過保護がありまして(笑)ご加護じゃたりないっ。最後に『World of love』という曲をやりますっ」「美しいところへ連れて行ってあげよう・・・」もう、うっとりするくらいに美しいこの場所で、杉さんの歌が聴けて神様に感謝したい気持ち。なんだかふわふわとした空気に会場全体が包まれているような気持ちになる。大きな大きな拍手。

 会場を去る杉さん。心の中に温かい気持ちがほんわりと残っていている。この空気の中にまだまだいたい。そんな余韻がいっぱい。まだ、頭の中には杉さんの曲が流れている。教会の出口に向かいながら振り向くとそこにはやっぱりまぶしいほどの白い十字架。この場所がこんなにも美しいのは、いろんな愛の始まりを見てきている場所だからなのかもしれない。柔らかなオーラが教会いっぱいに満ちている、そんな風に思えた。

 

Special thanks to JOEU & ANA HOTEL
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